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管理人の書いた二次創作SSです。 BL・腐女子がNGな方は閲覧しちゃだめですよ。
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2024.05.19 Sunday
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2012.07.07 Saturday
青い海の向こう、見えたもの
風にはためく、黒い帆の…海賊船。
 
彼は誘う。
「お前も来れば良い。」と
 
躊躇う僕に再び声を掛ける。
「海賊になるのは今でも嫌か?」
 
違う。
そうじゃなくて。
 
そうじゃないんだ―――――
 
 
 
 
 
 


「ジャック。
あんたはあんたの船を…自由を手に入れた。
…僕にはもう何の価値も無いよ。」
 
メダルの呪いは解けた。
そして僕は只の鍛冶屋のウィルに戻る。
 
「それだけの価値しか無いと思ったら、俺は今此処には立ってないね。」
 
「ジャック?」
 
歩み寄る彼に疑問を抱き、落としていた視線を上げる。
目の前にはジャックのセピアの瞳。
 
「ウィル。俺は何だ?」
「?何を云ってるんだ?」
「俺は何者なんだ、と聞いてるんだよ。」
「海賊船の…ブラック・パールの船長…だろう?」
 
何を今更と云わんばかりのウィルの答えに、ジャックはニヤリ、と笑った。
 
「そう、俺は海賊船<ブラック・パール>の船長だ。…海賊さ。」
 
慣れた手つきで腰に回される腕。
 
「だから欲しいものは奪う。」
 
「はぁ?!」
 
何を云ってるんだ、ジャック。
そう続けようとした唇が塞がれる。
 
「!」
 
「海賊になるのが嫌というなら、宝として奪うまで。
それでは参りましょうか、お姫様。」
 
笑うジャックに呆れつつも戸惑う自分。
 
「何を云ってるんだ!正気か、ジャック?!」
「正気なんて、あの無人島に置き去りにされた時から無くしてるさ。」
 
いつもの冗談なのか本気なのか分からない口調。
 
「お前に会ってからは更にね。」
 
 
 
彼の全てに惑わされる自分。
 
「…お姫様やお宝扱いされるのは納得出来ないんだけど。」
「では『海賊船ブラック・パール号のジャック・スパロウ船長の妻:ウィル・ターナー改め、ウィル・スパロウ』っていうのはどうだい?」
 
そんな言葉を吐き乍ら、流し目をくれて再びニヤリ。
 
「ジャック・・・・頼むから止めてくれ。海賊で良いよ。」
「『海賊で良い』とは失礼だな、ウィル・ターナー君。
―――然し此れで決まりだ。」
 
伸ばされる手。握り締められて、引かれてゆく。
ブラック・パール号に。
 
ますます惹かれてゆく。
ジャックに。
 
 
 
多分、岐度どうしようも無いから。
だから。
 
 
 
 
 
 
もう、自分の気持ちに嘘をつくのも戸惑うのも躊躇うのも止めた。
 
 
 
 
 
ジャックは誰も他に居ないのに、諸君!今日という日をお忘れなきよう!、なんていつものお決まりの台詞を言い、エリザベスから聴いた歌を歌う。
 
そんな彼の歌を遮るウィルの呼び掛け。
 
「ジャック。」
 
陽気に歌を歌いながら前を行く彼を、立ち止まって止まらせる。
 
歌を止めて振り返ると、ウィルがこちらをじっと見つめていた。
 
「なんだい、ウィル。心は決まったんだろう?」
「まだ云ってないことがあるんだ。」
「云ってないことだって?」
 
ウィルは怪訝な顔をするジャックの襟元を掴み、ぐいっと引き寄せた。
 
そのまま今度は此方からキス。
 
「・・・・!」
 
ウィルの予想外の行動に、ジャックは目を見開き固まっている。
 
何だ。可愛いところもあるじゃないか。
なんてウィルが思っているとは露知らず。
 
 
「あ・・・・っと。その・・・ターナー君。君、なんだな・・・案外と・・・」
視線を微妙に彷徨わせる。
「ジャック。あんたの気持ちはそのまま僕の気持ちだと・・・思う。
だからこそ、僕は財宝でもお姫様でもなく、ウィル・ターナーとして一緒に・・・・あんたと一緒に行きたい。」
 
そう云い切って、何だか恥ずかしくなってきたウィルは俯いた。
岐度耳まで赤くなっているに違いない。
 
―――思っているだけと口に出すのとでは大違いだ。
 
 
 
 
そんなウィルに向けられた言葉。
 
「上出来だ、ウィル。」
 
いつもの笑みを浮かべて、ジャックはウィルの両頬に手を添える。
自然と閉じられる瞳。
長く重なる黒い影。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして僕は「自由」を彼と共に体験する。
 
黒い帆の海賊船の海賊として、船長の傍らに立って世界の海を渡り歩く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
青い空、海風を受ける黒い帆。
風に留まること無く翻る黒いコートを着た人影。
 
其の傍らに僕は居る。
 
 
 
彼と一緒に今日も「自由」を感じて。
明日も明後日もその先も―――――――
 
海に還る日までずっと一緒に。
 
 
 
 



















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