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管理人の書いた二次創作SSです。 BL・腐女子がNGな方は閲覧しちゃだめですよ。
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2024.05.19 Sunday
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2012.07.04 Wednesday

【終宴-終焉】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
もう、其の赤い瞳は現実を見ていない。
 


虚空を彷徨い、何かを探しているかのようだ。
 
 
 
「鈴・・・」
 
 
 
腕の中、横たわる身体を抱き締める。
 
何でこうなっちまったんだろう?
 
俺達、良いダチになれたと思うのに。
 
お前と会うのも話すのも、凄く楽しかった。
 
年の近い、ある意味似た境遇の「友達」が出来たと・・・・
 
少なくとも俺は思ってた。
 
 
 
愚問だと、この時代に於いて敵味方に分かれた者には
その様な考えは愚かしいと。
 
分かっていても止められなかった。
 
 
 
「先生・・・俺、やっと先生に逢えるのかな・・・?
 
俺、頑張ったけど駄目でした・・・せんせぇ・・・・赦してくれますか・・・?」
 
 
 
血の気の無くなった、乾いた唇から漏れ出る言葉。
 
切なかった。
 
 
 
「鈴・・・俺・・・オレ・・・・」
 
 
 
昔の鉄に戻っていた。
 
鈴が壊れてから初めて会った時の鉄に。
 
 
 
「俺は・・・鈴と一緒に居たかった。
 
無理と分かってても、一緒に居て一番のダチだって云える様になりたかった。
 
…好き・・・だった。鈴のこと。
 
 
 
好き、だったんだ。」
 
 
 
黒い着物にじわりじわりと滲み、広がってゆく紅。
 
流れ出てゆく赤い命。
 
それは鉄をも侵食してゆく。
 
この状態では、鈴は既に色を無くして冷たくなってゆくまで、そう時間は無い。
 
もう、長くは持たないだろう。
 
 
 
血に濡れた白い袖先から覗く、毒々しいほど赤く塗られた爪。
 
其の手を強く握り締め、鈴の肩に顔を埋める。
 
 
 
まだ、温かいのに。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・鉄・・・?」
 
 
 
自分の名前が囁かれる。
 
飛び起きるようにして、鈴の顔を見ると、其の赤い瞳と目が合った。
 
 
 
「俺・・・分かってた。お前が先生を殺したんじゃないこと。
 
でも、唯一の人を亡くして、どうしようも無かった。 先が見えなくなった。
 
俺が弱かったから。
 
強かったら先生を守ることが出来た。
 
せめて一緒に戦うことが出来た。
 
でも、俺は弱かった。
 
でも・・・せめて俺に出来ることをすれば。
 
そう。先生の側に最期まで居たら良かったんだ。
 
でも、先生のあの顔を見たら・・・それも出来なかった。
 
あんな表情(かお)した先生、初めて見たから。
 
だからこそ、俺を逃がそうと、俺だけを助けようとしてるってこと。
 
自分は死のうとしてること・・・・分かってたのに・・・っ。」
 
 
 
 
 
透明な雫が、其の瞳から溢れ出る。
 
鉄も涙が止まらない。
 
 
 
「俺が殺したんじゃなくても、同じ事だ・・・鈴。
 
殺すか殺されるかだったんだから。
 
偶々、俺が止めを刺さなかっただけで・・・変わりないよ。」
 
 
 
 
 
 
 
「もう終わりにしよう、鉄。」
 
 
 
鈴は静かに云った。
 
 
 
 
 
「終わりにして・・・?鉄。」
 
「鈴・・・」
 
 
 
「ああ、もう一度お前と遊びたかったなぁ。
 
何も考えず、唯、友達として遊びたかった。
 
憎んだり、恨んだりしないで・・・・一緒に居たかった・・・な。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
誰か、誰か助けて。
 
鈴を助けて。
 
せめて心を救ってくれよ。
 
 
 
辰兄。
 
 
 
土方さん。
 
沖田さん。
 
ススム。
 
新八さん、原田さん、藤堂さん、あゆ姉、近藤さん、山南さん・・・
 
誰か、誰か・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
もう居ない人達。
 
皆、散っていった。
 
戦場で、病で、冤罪で・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「鉄」
 
 
 
不意に名前を呼ばれる。
 
首の後ろに回される、鈴の右手。
 
そのまま引き寄せられ、為すが侭になる。
 
軽く合わせられた唇は、冷たかった。
 
そして赤い印を鉄の唇に残す。
 
鈴の血(いのち)。
 
 
 
 
 
「御免、鈴」
 
 
 
「鉄、生きろよ。」
 
 
 
 
 
 
 
首の後ろの手が、だらり、と落ちた。
 
閉じられた瞼。
 
二度と笑うことの無い顔。
 
其の唇からは二度と言葉が吐き出されることは無く、呼吸も同じ。
 
二度と動くことの無い体。
 
唯の骸と成り果てた鈴。
 
 
 
「御免な、鈴。 助けられなくて、御免。 …っ。」
 
 
 
嗚咽が漏れた。
 
涙の向こう、見えるのは鈴の手。
 
血に濡れた黒い髑髏。
 
命を失って、鈴の心を永遠に手に入れた人。
 
最後まで最期まで敵わなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
涙はもう、出なかった。
 
終わったから。
 
長い・・・この絡んで縺れてもう、切るしかなかった糸。
 
今、最後の糸が切れたから。
 
欲しいものは手に入らなくて。
 
失いたくないものは総て失ってしまって。
 
もう、何も残ってないから 皆の所へ逝こうかと思ったけれど
お前が「生きろ」と云ったから 取り敢えず帰ろうと思う。
 
皆と暮らしたあの場所へ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 














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